未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
94

静岡県静岡市

竹細工のなかでも独自の進化を遂げた静岡の伝統的工芸品「駿河竹千筋細工」。一本一本手作りした竹ひごで組まれた作品は、どれも優美な曲線を持つ。今、十数人しかいない駿河竹千筋細の職人のなかで、最年少は唯一の女性。18歳で弟子入りして腕を磨いてきた女性職人を訪ねた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.94 |10 July 2017
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静岡県静岡市

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#1独自の進化を遂げた伝統工芸

神谷さんが見せてくれた新聞の切り抜き。優勝選手が掲げているのが神谷さんが製作を手掛けたトロフィー。

 昨年6月26日、静岡で開催された「ユピテル・静岡新聞SBSレディースゴルフ」。優勝した仲宗根澄香選手は、見たこともないようなトロフィーを手にしていた。繊細で流れるようなフォルムが美しいそのトロフィーがいったい何で作られているのか、すぐにわかる人はいないだろう。製作したのは、神谷恵美さん。駿河竹千筋細工職人だ。
 駿河竹千筋細工は「するがたけせんすじざいく」と読む。江戸時代の天保11年(1840年)より受け継がれる静岡の伝統工芸。そう、トロフィーは竹で作られたのだ。

 日本全国に竹細工の産地はあるが、駿河竹千筋細工は独自の進化を遂げた。一般的には竹を平らに加工した「平ひご」を編むが、静岡では竹を丸く細く加工した「丸ひご」を使い、それを組む。さらに、竹を輪にする技法、輪の部分をつなぐ「継手」という技法はそれぞれ静岡でしか見られないものだ。

神谷さんの作品。繊細な細工に目を奪われる。

 丸ひごに熱を加えてしならせることで、独特の曲線が生まれる。その上品なたたずまいは洋の東西を問わず人々の心を捉え、1873年(明治6年)、明治政府が初めて正式に参加したウィーンの万国博覧会に出品されると、工芸品として高い評価を得て輸出されるようになった。ちなみに今年4月、天皇、皇后両陛下とともに静岡市を訪れたスペイン国王夫妻にも、駿河竹千筋細工の作品が贈られている。

 しかし職人の後継者不足は静岡も深刻で、駿河竹千筋細工の職人で作る静岡竹工芸協同組合の組合員は現在十数名とピーク時の六分の一程度。そのなかで、駿河竹千筋細工のトロフィーを作った神谷さんは唯一の女性であり、最年少の職人だ。

 神谷さんは、18歳で弟子入りした静岡市伝統工芸技術秀士、篠宮康博さんの工房で今も大半の作業をしている。静岡駅から車で約20分。緑豊かな山の麓にある静岡市葵区の「篠宮竹細工所」を訪ねた。

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未知の細道 No.94

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。